その2
凍土へ降りてから、いつも通り現れた敵を狩りつつ進むこと10分後。
「ん?ナズキ?」
彼がいつの間にか近くにいないことに気づく。
「まったく...」
ナビシステムでナズキの居場所を確認しようとすると...
「緊急連絡てす。数日前から行方不明になっていた生物学者を確認しました。
現在地情報転送しますので、近くにいるアークスは護衛をお願いします。」
突如、サポーターからの連絡がくる。
護衛か・・・んーと、こっからだと近いな。
「こちらアークスねこみな現在地より近いため、現地へ向かいます」
「確認しました。近くに他の生命体がいる模様。警戒しつつ現地へ向かってください。」
「了解」
私はとりあえず急いでそこへいくことにした。
ナズキのことも少し気になるが彼なら1人でも大丈夫だろう。
それに、彼も今の緊急連絡でそこへ向かう可能性もある。
現地あたりまで近づくと、逆光のせいで見えにくいが少し積もった雪の上に
遠目からでも見えるそれは人がたっていた。
「サポーターがいってた生物学者かな?」
普通アークスの人ならナビシステムで確認できるが、ナビシステムは反応しない。
だったら、救援要請の人だという可能性は高いと判断し近づくことにした。
もちろん警戒しながら・・・
だいぶ近づき目視でもはっきりと確認できるようになったとき・・・ずるっ!
私はその場で思わず盛大にずっこけた!
「どうした!?若きアークスの少女よ!」
そこには確かに一人の男がたっていた。マッスルポーズしながらこちらへ訪ねる。
「あんたがどうしたー!」
スパーッン!私はその男にハリセンでとりあえずぶちかました。
「何をする!?」
当然抗議をする男
「なんで、ふんどし一丁でマッスルポーズしまくってんのよ!ヘンタイか!」
そうその男は、裸でふんどし一丁でマッスルポーズしてたのだ。
「心外だな!保護した生物学者への意識を保つための披露だ!」
・・・はぃ?
「・・・で?その保護した人は?」
言ってる意味がわからないので、とりあえずスルーすることにした。
後に理解するのはこの後の話を聞いてからである。
「何をいっているすぐそこにいるではないか、ほれ!」
ビシッと指さす方向へ見ると、木陰に生物学者らしき男がいた。
しかし、横たわっている。
「ちょ!?大丈夫ですかー!?」
私は慌ててその生物学者を助け起こし、抽入型のモノメイトで抽入する。
メイト系のタイプは二つあり、抽入型とそのまま飲料するタイプがある。
開発当初は抽入型のみだったが、アークスの方々は抽入のたびに痛いから
飲料タイプも開発してくれという要望があった為、開発会社は飲料型へと改良したのだ。
・・・しばらくして
「ふう、ありがとう助かったよ」
見たところ、たいしてケガはしていないようだが酷く衰弱してるようだ。
無理もない、一般の人間からしたら凍土はー5度以上にも寒くなる場所だ。
「ちょっと、そこの・・・」
さっきのマッスル男に状況を聞こうと声かけようとすると。
「ジン!私もアークスだ!」
ビシッっとまたマッスルポーズする男。
・・・気にしないように治療をしていたが、その間も後ろでひたすらマッスルポーズをしていた・・・
「あー・・・そう、ジン。私はねこみな。この状況を詳しく説明してほしいんだけど?」
「あー僕が説明しよう。君もアークス一員ならもう知っていると思うけど・・・」
彼の目的は凍土の生態状況を調べるべく、ここへきたようで。
数人いた護衛アークスは帰りの道中、突如スノウバンサーとバンシーに襲われたため、
アークス達は全滅。生物学者のバールさんは戦闘中にアークスの一人が
先に逃げるよう指示のもとでここまで来たそうだ。
「そう!そこで私が偶然にここの原生物に襲われてたところを保護したのだ!」
っと、またマッスルポーズするジン。
あんたマッスルポーズをイチイチしないと喋れないのか・・・
「いや、そこまではよかったんだ。そこは感謝している・・・」
バールさんは何やら顔を青ざめて語りだす・・・
生物学者は原生物に襲われ、もう絶対絶命と覚悟し目をつぶっていたが
一向に襲われる気配はなく、その代わり何やら金属音すら聞こえ、鈍い音すら聞こえる。
その音が途絶え暫くした後、バールはおそるおそる目を開けてみると、そこには一人のアークス
戦闘スーツを着ていたジンが戦っていた、バールは彼の戦いぶりを見守る中全ての原生物が消滅する。
「おお、助かった!キミもアークスなんだな!?すまないがモノメイトでもいいからわけてくれないか?」
バールは原生物から救ってもらったジンにお礼をいい、モノメイトを貰おうと手をだすと
「ダメだ!」
その要求を拒否するジン。
「んな?なんでだ!?私は保護対象の人間だぞ?!それはあんまりではないか!?」
抗議をするバールに、ジンは続けて答える。
「私が先ほどの原生物との戦いで全て使い切ったからだ!」
ふんぞり返るジン
「・・・はぁ!?」
「だから、全て使い切った!」
驚くバールにジンは再び答える。
「いや、まてまてだってあんたは、確かに果敢に原生物と戦ってたらしいけど・・・」
「うむ!」
再びふんぞり返る
「妙に避けないなとも思ってたけど・・・」
「それが漢としての道!ロマン!避けるなどありえない!」
「いや、だからって全部使うほどまったく避けないって、あんたアホか!?」
「バカ野郎!敵の攻撃をあえて受けて耐えるこそ漢の生き様よ!!」
「バカ野郎はあんただろうが!回復もできないこの先どうやって僕を護衛していくんだよ!?」
ここまで抗議したバールはふと思い出す。
「あ、そうか!テレパイプがあるんだな!?なんだよ~早くそれを使って僕を船に乗せていってくれよなぁ」
「うむ!先ほどの戦闘でナビシステムが壊れて使えなくなった!」
べしゃ。バールは思わず倒れる。
「あんたも男なら俺と一緒に漢の道を乗り越えろ!」
前に倒れたバールをよそに親指を立てるジン。
・・・そこまで経緯を聞いていた私もずっこけていた。
さっきまでのナビシステムが感知しなかったのは、連絡もできなかったのは壊れていたせいか・・・
ていうか、せめてナビシステムだけは守りなさいよ・・・
「んで、まだ続けていうと・・・」
「・・・まだ何かあるの?」
また続けて語るバールさん。
「わかった・・・とりあえず僕は一度ここで休憩するよ。
その間に他のアークスも来てくれるかもしれないし」
バールはそばにあった木陰に腰かけて、体力を回復しようとする。
・・・しばらくして、バールの意識は寒さによって眠気が襲う。
ジンはアークスなのでフォトンを全身にまとっているため、寒さなど関係ない。
「む!?いかんぞバール氏!眠っては死ぬぞ!?」
なんとかしてバールを眠らせまいと、頬を叩くジン。
それでもバールは眠気に襲われ意識がもうろうとする。
ジンはこの状況をなんとか打開しようと考え、ふと思いつく!
「そうか!気を紛らわせればいいんだ!」
バールのまぶたはどんどん重くなり、もうダメかとおもわれたとき
「みよ!バール氏!」
バールは、なんとかそれを見ると・・・
「ちょ!?あんた何やってんだ!?」
ジンは、ふんどし一丁でマッスルポーズを取り出す。
その不可解な現象に驚くバール。
「俺の肉体美で活気を取り戻させてやろうとしているのだ!」
むん!
「・・・えぇぇえー?・・・」
バールはげんなりするが、眠気など吹き飛んだことには成功する。
「どうだ!これが漢の花道に進んだ結果!傷も漢の勲章!」
さらにポーズをかえてバールに披露する。
ここまで聞いていた私の顔は雪にうもれていた。
「・・・いや、確かに生き延びれたけど、1時間も延々と続いて・・・
精神的苦痛で今に至るわけです・・・」
バールの顔は思い出してただけですっかり生気を失っていた。
「横たわっていた原因はあんたのせいかー!」
スパーン!ジンの頭めがけてハリセンの音が響く。
バールは1つ咳払いし、口開く
「とりあえず助かったよ、君のナビシステムは生きてるんだろ?それでテレパイプだして帰らないか?」
「そうだけど、もう1人一緒に降りた仲間がいるの、連絡しないと。」
私はとりあえず、連絡しようと通信始める
「ナズキ、ナズキこちらねこみな応答して」
......
「...はぁ!...おう!こちらナズキ!大変な状況になってる!」
「え?!」
「おわっと!マジしつけえな!...ねこみなの位置はつかんでる、そっちいくから手伝ってくれ!」
バンバン...!
通信から銃声がする、これは...
「おい、何があった?!」
さっきの通信のやりとりで尋常じゃないことはわかる。バールさんもそれを聞き、慌てて私に問う。
「とりあえずバールさんは、テレパイプだすからそれで先に帰還して。」
「わ、わかった!」
私はナビシステムのアイテム収納装置パネルでテレパイプを押すが、
「あれ?!」
「どうした!?」
普段なら粒子状でナビシステムに収納されているアイテム、武器防具などのものは
ボタン一つで出し入れできるのだが...
「何故かテレパイプだけ出せないの・・・」
「なんだって?!何かの故障か?!」
・・・つづく